13年目のやさしい願い
一ヶ谷くんはわたしをジーッと見つめた。
何だろうと小首を傾げて見つめ返すと、一ヶ谷くんはふーっと大きく息を吐いた。
「陽菜ちゃん、怒ってないの?」
「怒るようなこと、したの?」
「したかと思った」
「……例えば、どんなこと?」
わたしが聞くと、一ヶ谷くんは静かに答えた。
「彼氏いるのに、毎日会いに行ったりして困らせたよね」
「……うん」
「あ、否定しないんだ」
「だって、本当に困ってたもの」
そう言って口をとがらせると、一ヶ谷くんはようやく笑った。
苦笑いだったけど。
それから、少しの沈黙の後、一ヶ谷くんは静かに語り出した。
「一目惚れって言ったけどさ。オレ、本当は、陽菜ちゃんのこと、もっと前から知ってた」