13年目のやさしい願い
「……え?」
わたしのこと、もっと前から知ってた、って言った?
もっと前って、入学式より前ってこと?
「オレ、去年、事故にあって骨折して入院したんだけど、その時、陽菜ちゃんが小さい子に絵本読みに来てて……」
去年? 入院? ……この病院に?
思わず、一ヶ谷くんの顔をマジマジと見てしまった。
一ヶ谷くんは困ったような顔をして、また視線を逸らした。
「覚えてないと思うけどさ。オレ、もう絵本を読んでもらうような年じゃなかったし。
整形で良かったはずが、ベッドの空きがないからって、小児科の、しかもチビばっかの部屋に放り込まれて、オレ、正直腐ってた。
そんな時に、陽菜ちゃんに会ったんだ」