13年目のやさしい願い


訥々と語る一ヶ谷くんの声が、静かな病室に響く。



「うるさくしてゴメンね。早く良くなるといいねって、笑いかけてくれた。

子どもたち、みんな懐いてて、絵本を読む声がホント優しくて、陽菜ちゃん、文句なしに可愛いくて……。

でもね、それより何より、心がキレイな人だなって思ったよ」



ずっとうつむいて話していた一ヶ谷くん、ふいに顔を上げてわたしの方を見た。

にこって笑ってくれたけど、どこか笑顔がつらそうで……。

彼の好意が分かっているだけに、何も言えなかった。



「陽菜ちゃん、オレの入院中に3回来たんだ。

そのたびに、違う絵本を読んでて、いつも本当に楽しそうで。

子どもたちと折り紙も折ってたよね。

秋だったからかな? ドングリで工作とかもしてたよね」



一ヶ谷くんが、ポケットから、何かを取り出した。

開いた手のひらの上にあったのは、ドングリで作った小さなコマだった。


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