13年目のやさしい願い
「それでね、入学式の日、裏口で陽菜ちゃんを見つけた時、オレ、運命だって思ったんだ」
「……え? 運命?」
「運命って言うか、……そう、運命の神様がオレにチャンスをくれたって感じかな」
その時の興奮を思い出したのか、一ヶ谷くんはどこか嬉しそうだった。
「同じ学校に通って、遠くから見るだけでもいいって思ってた。
もし声が聞けたら、きっと、すごく嬉しいだろうなって思ってた。
それだけで、きっと幸せだと思ってたんだ。
でも、実際に入学式の前に、あんなところで会ったら、もうダメだった。
運命の神様に、はなから諦めるんじゃなくって、ダメ元でガンバってみろって言われた気がしたんだ」
一ヶ谷くんは、ふうっとまた長く息を吐いた。