13年目のやさしい願い


「ごめんね。初対面のフリして」

「……ううん」

「もうね、ムリなんだってのは、よく分かった。ちゃんと諦めるよ。

だけど本当は、陽菜ちゃんの顔が気に入ったとか、一目惚れとか、そんなんじゃないんだって……それだけは、言いたかった」



そこまで話すと、一ヶ谷くんはようやくホッとしたように笑顔を浮かべた。



「ありがとう」



そう言うと、一ヶ谷くんは苦笑した。



「陽菜ちゃん、お礼言うの早すぎ」

「え?」

「って言うか、何にお礼言ってるの?」

「……話してくれて、ありがとう、かな」

「好きになってくれて、ありがとう、じゃないの?」



その言葉に絶句していると、一ヶ谷くんはクスリと笑った。

< 340 / 423 >

この作品をシェア

pagetop