13年目のやさしい願い


「……るな。……陽菜」



誰かに呼ばれた気がして、ゆっくりと目を開けた。

まだ寝ていたかったのに、そう思いながら。

ぼんやりとした視界の中で笑っていたのは、白衣を着たママだった。



「お昼ご飯よ」



そう言いながら、ママはわたしの昼食の横に、お弁当箱の入った袋をトンと置いた。

寝ぼけた頭で、ぼんやりママを見る。

白衣を着ている勤務時間中のママ。

こんな風に、時間ができると、病室を覗きに来てくれる。



「……ご飯?」

「そう。一緒に食べましょう」



もう……お昼?



時計を見ると、12時半。

朝の回診もまったく記憶になかった。

何の夢も見なかった。



……こんなに熟睡したのは、久しぶりだった。

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