13年目のやさしい願い


「陽菜? 大丈夫?」



ぼーっとしていると、ママに顔をのぞき込まれる。

小さくうなずいたけど、頭は中々動き出さない。



「陽菜?」



ママはまたわたしを呼ぶ。

朝、カナが来て、その後、一ヶ谷くんが来て……。

あれって、今日だよね?



寝る前と、起きた後で、身体の感覚も記憶も断絶している感じがする。



「大丈夫? 気分悪い?」



「あ……ううん。大丈夫」



目を何度も瞬かせた。

深く深く息を吸う。

それから、ママを見て、ようやく笑顔を見せることができた。



「ごめんね。……なんか、すごくよく寝たみたいで、」

「ああ」



ママも笑った。

そういうこと、あるよねって。

そう言いながら、リモコンを手に取り、ベッドの背を起こしてくれた。

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