13年目のやさしい願い
「あのさ、陽菜」
そう言うママのお弁当は、既に空っぽになっていた。
ママは、冷蔵庫から素早く取ってきた栄養ドリンクのフタを開けながら、軽い口調で言った。
「ワガママ言ってもいいのよ?」
「え?」
「そんなにいい子でいなくて、いいのよ?」
「ママ?」
「そんなにストイックに自分を律する必要はないと思うんだけど」
「……いったい、どうしたの?」
突然の話に、ろくに進んでいなかった食事が完全に止まる。
「普通、もう少しワガママよ、あなたくらいの年の子って」
「そうかしら?」
「世界は自分を中心に回ってるくらいに思ってるでしょ?」
壮大な例えに、思わずクスリと笑う。
世界がわたしを中心に回ってるはずがないじゃない、って。