13年目のやさしい願い


瑞希ちゃんは、裕也くんに2つの言葉を残した。



忘れていいよ。

幸せになって。



そうして、わたしにもお別れの言葉をくれた。



大好きだったよ、陽菜ちゃん。



瑞希ちゃんの氷のような冷たい手の感触が思い出される。

裕也くんへの言葉を言う前の、遠くを見るような目を、言った後のホッとしたような表情を思い出す。



それから、まだ元気だった頃の瑞希ちゃんの笑顔が、朗らかな笑い声が、脳裏に浮かんでは消えていった。



ねえ、瑞希ちゃん、わたしは今でも大好きだよ。



気がついたら、涙があふれ出て、頬を伝っていた。



わたしも、カナを縛りたいなんて思っていない。

もし、わたしが死んだら、少しの間泣いて、そして元気になって、カナの好きな道を歩いて欲しいと思ってる。



でも……。

そう。

もしも、願っても良いのなら……。


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