13年目のやさしい願い
「陽菜ちゃん、考えておいて!」
そいつは、また人なつこい満面の笑みを浮かべた。
それから、
「また会いに来るから!」
爽やかに言い置いて、走り去った。
「二度と来るなっ!」
怒鳴りながら、そいつの背中を思わず睨みつけた。
まるで、突然やってきた予定外の台風が、一気に通り過ぎたような気がした。
……実際、台風だった、そいつの存在は。
階段横のうちのクラス。
その廊下で話していたんだ。
多少早い時間とは言え、教室に向かう2年はもとより、階段を通る1年の耳にも、オレたちの会話は筒抜けだったらしい。
その日の帰りには、学校中、この話で持ちきりになっていた。