箱の中の苺/S
いつからこんな関係が始まったかなんてもう忘れた。
出会いは多分突然で、きっかけなんて些細なものだった。
でも気がつけば、バイト中も華のことが忘れられなくて、
僕と会話していない時はいつも何をしているのか、どこへ行っているのか、誰といるのか。
そんなことばかりが頭の中を駆け巡って……。
箱の中の苺は、その魅力を押し込めた香りだけで僕を誘う。
箱から出る気もないくせに、どんどん僕を引き寄せる。
そしてそれでもいいと、僕がこの関係を選んだ。
会うことのない、
ネットの中だけの恋人。
僕らには、どんな終わり方が似合うのだろう。