極彩色のクオーレ
下から朝食のいい匂いが運ばれてくるところで、片付けは終了した。
本の配置はともかく、室内はラリマーが入る前の状態になった。
ラリマーが肩をぐるぐる回し、また大あくびをする。
もう相手を圧していく雰囲気は欠片もなかった。
「あー、終わった終わった。
ありがとな、ニコ。手伝ってくれたおかげで助かった」
背中を叩かれ、ニコは両てのひらをラリマーに向けて首を振る。
「大丈夫ですよ、もともと朝はそこまで仕事がありませ」
「お!このふわっとした匂いはもしやスクランブルエッグか!?
オレの大好物じゃん!
やったね、しかもティファニーが覚えててくれたとは感激だ」
「わりと毎朝作ってくれますよ、ティファニーは。
それに覚えているとは考えにく……耳に入っていませんね、あの様子では」
鼻をひくつかせて匂いを嗅いだと思いきや、ダダダダダ、とラリマーが足音を響かせて下へ降りていく。
伸ばしかけた腕を引っ込め、諦めてニコはため息をついた。
「言うだけ言って、こちらの話は聞かない人ですね……本当に肝心なこと以外は。
それに……へらへらしているようで、けっこう他者を見ている」
『今のご主人に失礼だとは思わないのか?』
ラリマーの穏やかな音声が、鼓膜の奥で再生される。
チカッとほんの少しの間だけ、視界が群青色に染まった。
何も言い返せなかったのは、こんな自分をそう客観視する自分がどこかにいるから。
そして同時に、それに気づいていないふりをしていた自身も。