極彩色のクオーレ
力の緩んだ手から鍵がこぼれ落ち、ニコのつま先に弾かれて本棚の前まで滑っていった。
棚と床の間に入りこまなかったのは偶然であろうか。
「おっと」
小走りで棚に向かい、鍵を拾って身体を起こしたところで、ふとニコの目に一冊の背表紙が止まった。
『植物百科図鑑』
ラリマーが顔にかぶせていた本である。
その専門分野を学ぶためか、分からない植物を調べるためにしか手に取らないような、緑色の布張りの図鑑。
彼はこれで何を見ていたのだろうか。
少しだけ興味をもち、ニコは図鑑を出して適当なところで開いてみる。
どの植物にも写真付きの詳しい解説があり、分かりやすい。
なんとなくページをめくっていると、階段下からティファニーの声が届いた。
「ニコー、お待たせ。朝ごはんできたよー」
「あ、はい。すぐに行きます」
(何を調べていたのか、本人に尋ねた方が早いですね)
『植物百科図鑑』を脇に抱えて、ニコは書室の鍵を閉めてティファニーのもとへ急いだ。
ダイニングの扉を開けると、できたての温かいご飯の香りが強くなった。
テーブルにはパンにスープ、色とりどりの野菜を使ったサラダにフルーツヨーグルト、ラリマーが二階で言い当てたスクランブルエッグも用意されてある。
そのラリマーは、すでにスクランブルエッグを頬張っていた。
彼の皿だけ量が多いのは、リクエストしたからなのか。