極彩色のクオーレ
ため息をついて、ラリマーは後を追いかけた。
ニコはティファニーが辛くならない程度の早足で、ここと比べて格段にすいている裏道に入った。
しばらく歩いたところで、ティファニーが立ち止まってほうっと息をつく。
ニコも足を止めて、汗だくになっている主人に尋ねた。
「大丈夫ですか?」
「う、うん……あー、びっくりした。
やっぱり人がたくさんいるところってちょっと怖いね。
人の波にのまれちゃいそうだったよ」
「ほら見ろ、徒労に終わったじゃねえか」
ラリマーが呆れたような口調になり、ティファニーの頭にハンカチを載せる。
息を切らしながらティファニーは礼を言って、額や首筋ににじんだ汗を拭いた。
目隠しにも汗が染みているが、代わりのリボンを持っていないのでそのままにしておく。
「とろうって何ですか?」
「家に戻ったら辞書で調べろ。書室になんでか5冊あったか……あ」
説明している途中で、ラリマーの視線がニコから通りの前方に投げられる。
それを辿ってニコも振り返ると、その先にこちらに向かって猛然と歩いてくる青年がいた。
黒いキャスケットを目深にかぶっていて顔は見えないが、誰だかすぐに分かる。
「レムリアン」
ニコが名前を呼ぶと、レムリアンは彼の前で足を止めた。
摩擦が強いせいで、キッと高い音がレムリアンの両足から鳴る。
レムリアンはキャスケットのつばを持ち上げ、ニコの顔を覗き込んだ。
ニコも心持ち顔を上げて、自分より高いところにある紫色の瞳を見つめる。