極彩色のクオーレ
ニコはリビアにぐいぐい腕を引っ張られ、階段を2階分上がった。
職人だからであろう、非力な外見とは裏腹にリビアはなかなか力があり、指がニコの腕に食い込んでいる。
人間の腕だったら、間違いなく痕が残っているだろう。
3階の一番広い、作業場らしき部屋に入り、ニコはその中央にあった椅子に座らされた。
つくりはセドナの工房とよく似ているが、棚や机、そしてニコが座っている椅子もすべて、桃色と白を基調としたレースやリボン、フリルで飾られている。
彼女の趣味なのだろう。
「ちょーっと待っててね」
リビアは戸棚からスケッチブックと鉛筆を取り出すと、ニコの傍らにイーゼルを引っ張り、そこに白紙のページを開いて置いた。
「あの」
「ああ、動かないで、しっかり調べられないでしょ」
立ち上がろうとしたニコの肩を押さえて椅子に深く腰掛けさせて、リビアは顔をのぞきこんだ。
両頬をそっと撫で、薄荷色の瞳をうっとりと見つめる。
「すごいわ、ここまで眼球を再現できるなんて。
資材は何を使っているのかしら……動かないで、話の前にあんたの仕組みを見させてね」
「は、はあ……」
今のリビアは先ほどまでの驕慢な、女王様のような女の子ではない。
新しい、自分の知らない技術を目の前にして、それを余すところなく吸収しようとしている、一人の人形職人だった。
(少しだけなら、我慢しましょうかね)
ティファニーに申し訳ないと思いつつ、ニコはリビアの観察に付き合った。