極彩色のクオーレ
枕ごと頭を鷲掴みにされて引っ張られ、ハックは思わず悲鳴をあげた。
耳を押さえ涙目でタンザを睨む。
「何すんだよ!俺ちゃんと正直に言ったのに!」
「別に怒ってなんかないだろ」
「その顔で言える科白かその顔で、鏡でも見て来い!」
タンザの表情は、さっきと微塵も変わらない。
むしろ険しくなっていた。
それなのに先ほどからまったく怒鳴っていないということは、本気で怒っているという意味である。
暑くて左足に巻きついた掛布団を外したとき、指先が包帯に触れた。
ちくっと針でつつかれたような痛みが鈍く広がる。
傷はまだ見ていないが、包帯の巻き具合と痛みの走り方で、軽くはないとは分かった。
ハックは自分の左手を見つめた。
時間が経ったせいだろう、徐々にあの瞬間を思い出せていく。
薄い汚れがあるタンザの背中。
迫ってくる大きな歯と口。
突き飛ばした勢いで舞う土。
足元にとびつく白い巨体。
ひっくり返る青空と、灰褐色の岩肌。
視界の隅に散る、真っ赤な色……
(……ああ、そうか、こいつがこんなに怒るのは当たり前か。
俺はあの岩山で死ぬところだったんだ)