極彩色のクオーレ
「それが、食い残されたヤカゲの臭いだったんだよ。
断面とかけっこうグロくてちょっと吐いた。
あれを食っていたせいで、ロアがいつも以上に攻撃的になっていてこんなことになったってワケだ」
「そうだったのか……だけど、なんであの岩山にヤカゲがいたんだ?」
セドナが眉間にシワをよせて首をひねると、ラリマーがパチンと指を鳴らした。
どうやら同じことを考えていたらしい。
ラリマーは二回頷く。
「やっぱり、おかしいよな。
ヤカゲの分布は大陸のもっと南だ、ルースの近くにいるはずがねえ。
エンハンスならともかく、パビリオ山にいるなんて絶対におかしい」
「それって、ギベオンが私に教えてくれたことと関係しているのかな?」
ティファニーが尋ねると、ラリマーは長く唸って考えた。
「分からねえけど、可能性は大だな。
あのときは半信半疑だったけど、今は7割くらい信じている。
今度あいつや猟師に話を聞いてみるか……」
「む、無茶はしないでね」
「分かってる分かってる、心配すんなって」
不安そうに言うティファニーの頭を撫で、ラリマーは先を歩いて行く。
「心配することはねえよ、ティファニー。
あいつなら多少無茶したって死んだり大ケガしたりはしねえからさ」
「そ、そうかなあ……それならいいんだけど」
セドナは少しおろおろするティファニーの背中を叩いて、彼女と一緒に家へと歩き出す。
それに続こうとして、ニコは足を止めた。
臙脂色の空を見上げる。
(ルースにいないはずの獣が、あちこちで見られるようになってきた。
なんだか、妙なことが起こりそうですね……)
風になびく枝のこすれ合う音に、どうしてだか左胸がざわつく。
ちか、と一瞬だけ、青い光が視界を染めた。