極彩色のクオーレ
ルースで暮らすようになってから、1年近くが経過する。
来たばかりのころは暗い心の針の方が多かったのに、今では明るい心が倍近くになっていた。
戦場では、何十年もいたのに明るい心は一つも覚えられなかった。
逆に、ここでは暗い心を知ることがない。
どちらも同じ人間に出会って、教わってきたはずなのに。
どうしてこんなにも違うのだろう。
「でも、そのシャロアって職人さん、すごいよね。
こんなにたくさん”心”を覚えていたら、もう普通の人と変わらないんじゃないの?
見た目も言われなくちゃ気づけないくらい人に近いし」
おっかなびっくりに羅針盤に近づいて観察していたケセラが顔を上げる。
いくつもの光を抱いた双眸が、ニコを真っ直ぐに見つめていた。
ニコはその瞳を見返して、首を横に振ってみせる。
「いいえ、それはあり得ません」
「え、なんで?」
「どんなに似せても、ぼくたちゴーレムは人の手によって作られたものです。
人間と変わりないということはつまり、人間が持つ特徴や特権を完全に模倣しているということ。
でも、それは絶対に成し得ないことでしょう。
この世で人間ほど、複雑な生物は存在しませんから」