極彩色のクオーレ
直後、ハウンドがのっそりと起き上がった。
網がいともたやすく引きちぎられる。
「う、わあああっ!」
誰かの悲鳴が迸る。
それを皮切りにあちこちで叫び声があがり、人だかりが大きく動き出した。
ハウンドから逃げようと走り出し、恐怖で動けない人がなぎ倒され、それに躓いて人が転倒する。
通りの騒然とした空気を感じた馬たちが甲高く嘶き、さらなる混乱が生まれる。
「うおおっ!?」
「危ね!」
ラリマーやセドナが声をあげながらも、ティファニーやケセラたちの盾になろうと動く。
ケセラはすでに泣きべそをかいて座り込んでいた。
荷車の傍にいた衛兵が銃を装填したが遅く、ハウンドに吹き飛ばされる。
後方にいた衛兵が三人がかりで押さえようとしたが、こちらもハウンドの尾に弾き飛ばされてしまった。
ハウンドは四肢と首とを鎖で荷車につながれていたが、勢いでその荷車が軽々とひっくり返る。
もはや拘束具の役目を果たしていない。
「シャァアアアッ!!」
牙を剥いたハウンドが首をぶんぶん振り、その動きがぱたりと止まる。
その顔の先には、鉄柱にすがりついて座り込んでいる小さな男の子の姿があった。
周りにいた住民たちはすでにそこから離れている。