極彩色のクオーレ
手を握られたティファニーは、彼に悪意がないと理解しつつも戸惑う。
初対面の人間、しかも異性にいきなり触れられるのは苦手だ。
けれども相手は異国の王子。
邪険にするわけにもいかず、ティファニーはおずおずと尋ねた。
「あ、あの……?」
「君がニコの主人なんだね。
名前を教えてもらってもいいかな?」
「えっと……ティファニーです」
「ティファニー…」
セイクリッドが彼女の名前を低い声で繰り返す。
そうしてティファニーの手を握っていることに初めて気づいたかのように慌てて、でもぞんざいにせず彼女の手を離した。
気恥ずかしさを隠すよう、ピシリと背を伸ばして頭を垂らした。
たったそれだけの動作であったが、洗練されたものである。
「大変失礼いたしました。
姫百合の花のように可憐な乙女にこのような不始末、心より謝罪いたします」
「あ、いえ、気にしないでください。
ちょっと、びっくりしちゃっただけで……私、目がこんなですし」
セイクリッドが顔を上げ、湖底の色の瞳をティファニーの目隠しに向ける。
首を少しだけ捻り、静かに尋ねた。
「もしかして、目が見えないのですか?」
「はい、もう慣れっこですけど」