10円玉、消えた
そこでふと、公園で出会った老人のことを思い出した。
「そういえば今日、父さんの知り合いだっていうお爺さんに会ったよ」
アイロンがけしている幸子の手がピタッと止まった。
源太郎は眉を寄せる。
「俺の知り合い?何て名前の爺さんなんだ?」
「え~っと…あれ、なんだっけな」
竜太郎は老人の顔を頭に描きながら、なんとか思い出そうとしていた。
痺れを切らして源太郎が言う。
「山村さんて人か?」
「違う、そんな名前じゃなかった」
“山村さん”というのは、源太郎がこの店を出す前に修業させてもらった、『一番軒』という大きなラーメン屋の店主である。
年齢は60を越えているが、確かに“お爺さん”のイメージではない。
がっしりした体格で、いわゆる“オッサン”というタイプだからだ。
「なんか水戸黄門みたいな感じのお爺さんだったなあ」
竜太郎は首を傾げる。
「なんだよ、それじゃさっぱりわからねえな」
源太郎は、もう竜太郎の話しに興味が無さそうに、傍にあった新聞を読み始めていた。
そんなのお構いなしに竜太郎が言う。
「確か…、“さん”なんとかって名前だった。あ、“さんげんざか”だ!そうだ、間違いない!」
「そういえば今日、父さんの知り合いだっていうお爺さんに会ったよ」
アイロンがけしている幸子の手がピタッと止まった。
源太郎は眉を寄せる。
「俺の知り合い?何て名前の爺さんなんだ?」
「え~っと…あれ、なんだっけな」
竜太郎は老人の顔を頭に描きながら、なんとか思い出そうとしていた。
痺れを切らして源太郎が言う。
「山村さんて人か?」
「違う、そんな名前じゃなかった」
“山村さん”というのは、源太郎がこの店を出す前に修業させてもらった、『一番軒』という大きなラーメン屋の店主である。
年齢は60を越えているが、確かに“お爺さん”のイメージではない。
がっしりした体格で、いわゆる“オッサン”というタイプだからだ。
「なんか水戸黄門みたいな感じのお爺さんだったなあ」
竜太郎は首を傾げる。
「なんだよ、それじゃさっぱりわからねえな」
源太郎は、もう竜太郎の話しに興味が無さそうに、傍にあった新聞を読み始めていた。
そんなのお構いなしに竜太郎が言う。
「確か…、“さん”なんとかって名前だった。あ、“さんげんざか”だ!そうだ、間違いない!」