10円玉、消えた
「まあ一応な。トモ、お前は?」

「さあ、まだそんなこと全然考えてないからな。でもまあ親父が公務員だから、きっと俺も公務員になるんじゃねえのかな」

「あのさ、例えば予知能力が身についてさ、自分が成功する道がわかったら、やっぱその道を選ぶ?」

友和は不思議そうな顔で竜太郎を見た。
「お前今日はどうかしてるぜ。ヘンなことばっか言ってよ」

「悪ぃな、ヘンな夢見たせいだと思う。なあトモ、どうだい?」

「成功する道がわかってりゃそっちを選ぶかってんだろ?そんなの選ぶに決まってるさ」

「自分がやりたくないことでもか?例えば学校の先生とかさ」

「う~ん…そりゃ気が進まんけど、そっちで絶対成功するってんなら選ぶだろうなあ」

「そうか…やっぱりそうだよな」

“将来なんて自分で決めるもの”と、先ほど割り切ったばかりなのに、竜太郎は知りそびれた“10円玉占い”の結果を、やはりまだ気にしているのであった。



この日竜太郎は、いつもより少し帰りが遅くなった。
放課後、クラスメートとの話しにすっかり夢中になってしまったからである。

いつもの帰り道で、例の公園の前を通る。
昨日のように立ち寄る理由はない。

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