別冊 当て馬ならし
「まぁ、あいかわらずの負けず嫌いねぇ、
 そろそろ譲ったら?」
「いやだ!」
一口で前菜を平らげて言う父は、
これでもこの国の王である。
さらに言えばナイスミドルな
・・・いい大人である。

それが、『いやだ』って・・・
あたしとお母さんは
やれやれと肩を竦め笑い合う。

「ベルの馬車の護衛を
 セルヴァンにまかせるがいいか?」
そんないいも何も・・・
少しでも近くにいてくれるなら
さらに嬉しい。
「ええ」
本当は、顔が緩みまくりそうなのに
おしとやか風に言う。
母が噴き出して
あたしも自分でおかしくて噴き出して、
夕食は楽しく過ぎて行った。
久しぶりに
おねぇちゃんが居ない淋しさを
感じなかった。

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