甘い唇は何を囁くか
はぁ

はぁ

息を上げて、その背を見つめた。

宗眞は  

自分の愛しい人をどうしたのだろうか。

人間を仲間に変える力、を今も持っているってことは

その人を変えなかった、ってことで

その人がどうなったのか



宗眞しか知らない

死んでしまったのか

それとも

遼子はハッとして前を見据え、ようやく足を止めた。

宗眞が立ち止まっている

見れば、もう少し先には海が見えた。

海岸まで行こうとしているのだろうか。

けど何故?

息を整えながら、ゆっくりと距離をとりながら宗眞に近付いていく。

宗眞は紅い顔をして息を荒げている遼子を見てにまりと笑い言った。

「すっげしんどそう。」

そりゃ当然でしょ?

私は、あなたとは違って人間なんです。

って言いたいけど、言葉が出て来ない。

とりあえず、お水が飲みたい。

宗眞は頭の後ろで手を組んでため息をつくと言った。

「俺は、あいつみたいに優しくないよ。」

カッとなった。

それって、私がこいつに優しさを求めてるってこと?

それには答えない、ってそう言いたいわけ?

べっつに、優しくなんかして欲しくありませんし!

ぜいぜい

もう、人間なこの身体がにくったらしい。

シスカなら、こんな台詞を言わせないに違いないのに。
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