甘い唇は何を囁くか
くそ

・・・

宗眞は、ちっとふたたび舌打ちして遼子の身体を抱き上げた。

泣いている顔が目の前に来て、何だか欲情する。

さっと顔を逸らすのも、何だか悪くはない。

けど、いらつくのも半端ない。

何も声をかけないまま、コテージの中に連れて行く。

木の香りがする。

それからストーブの暖かいまろやかな温もり。

遼子をソファーに下ろして、コートをコート掛けにかけた。

まだ泣いている。

そんなに、俺とするのはイヤってことか。

ま、そりゃそう・・・か。

あのおっさんと相思相愛なんだもんな。

きっと、ここに来る前にも甘い時間を過ごしたに違いない。

何百年仕込みの手練手管に、遼子なんか簡単にイチコロだろう。

ま、比べられても負ける気はしないけど。

ああ、何だろう。

なんで、こいつ相手だとこんなに調子が狂う。

がしがしと頭を掻いて、宗眞は口を開いた。

「いいかげんにしろよな。つか、お前が自分で来たんじゃねぇの?」

俺だって傷つくんだけど、ってそう言うと遼子は鼻をすすりながら顔を上げた。

「・・ごめ・・・ん。」

ごめんと来たか。

悪気はないんだろうけど、ぐさっと来る。

「別に。」

そう言って遼子の向かいのソファーに腰掛けた。

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