甘い唇は何を囁くか
ポーチにかかるカーテンの向こう側に、人の影が月の光に照らし出されて浮かび上がった。

・・・女か。

シスカははぁと呆れた口調でため息を零して言った。

「また、同胞か。もう驚きもしない。」

その影は、ゆっくりとシスカの前に現れた。


美しい老婆だ。

バンジェスを思い出す。

こいつも、かつて愛した者に自分の不老を与えた成れの果て―か。

銀の髪に、碧眼。

そして、長い蝋梅色のドレスを着ている女は、壁にもたれかかると囁くように言った。

「久しぶりね…。」

・・・・

「覚えてない?」

確かに、いい声をしている。

どこか、懐かしくさえも感じる、女の声にシスカは困惑して立ち上がった。

「・・・悪いが。」

歩み寄りながら記憶を辿る。

どこかで逢った事のある女か。

老婆は、悲しげに嘲笑を浮かべた。

「それが、当然だもの。私も、驚きもしない。」

シスカが言った言葉を繰り返してその頬に涙をつたわせた。
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