甘い唇は何を囁くか
ポーチから、まだ若いヴァンパイアが、人間の女を連れて歩いて行くのが見えた。

泣いている・・。

けれど、それしか方法がないということは私も知っていること。

その娘に与えられた幸運を唇を噛んで見送った。

・・・きっと、これが最後のチャンス。

もう、今を逃したら、彼と話すことはできない。

彼の前に現れる勇気は持てない。

絶対に・・・。

カーテンの向こうであなたがうな垂れている。

可哀そうにと、駆け寄って私が代わりに抱きしめてあげたい。

こんな年老いた姿になっても、未だ途絶えぬ性欲と血への渇望。

呪い以外の何物でもない。

あなたが欲しい。

こんなにも・・・。

誰だと声をかけられて、私の胸が高鳴った。

どれほど、長い歳月、この声を聞きたいと、思っていたか・・・。

涙が浮かぶ。

ゆっくりと、あなたの前に姿を現した。


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