甘い唇は何を囁くか
どこに行った・・・?

シスカは駆けながら辺りを見回した。

月は高く、まだ夜は深い。

きっと、宗眞はどこかに遼子を連れ込んだはずだ。

どこにいる??

遼子が、あの男の記憶を留めたまま、ヴァンパイアになるなんて―そんなことは許せない。

許すことができない。

遼子もきっと、傷つくはずだ。

遼子・・・!!

俺を呼べ!

もっと!!

どこからか聞こえてくるお前の声。

お前の香り。

そんなものを頼りに犬のように鼻を、耳を働かせる。

こんな無様なことは、遼子以外には絶対にしない。

だが、今は必死になって遼子を探す事にどんな能力も役立てたい。

海の方から香ってくるその甘い血の匂いに、遼子の存在を確信したのは、町を抜けてようやく海岸が見えた頃のことだ。

それほど、時間は経っていないはずだ。

まだ・・・間に合うか・・・?

だが、間に合って・・・そしてどうする?

自分の中に廻る葛藤はある。

遼子を仲間に変えるためには、この方法しかない。

あの男に遼子を噛ませるしか・・・。
< 177 / 280 >

この作品をシェア

pagetop