甘い唇は何を囁くか
ドクン

眠っているはずの心臓が跳ねる音を聴いた。

コテージがある。

明かりが燈っているのが見える。

あそこだ―。

あの建物の中にいる。

「・・・。」

シスカはごくりと唾を飲み、ゆっくりとその建物に近付いた。

気配ではない。

その存在を感じる。

痛いほどに・・・。

シスカは胸を抑えた。

中2回と呼べる僅か頭上に、窓が見える。

そこに、愛しい者がいる。

これが、ヴァンパイアの運命に惹かれる力なのか・・・。

苦々しい想いがこみ上げて来る。

いやな予感がする。

シスカはぐっと両足に力を込めた。

踏み切ると、トンと軽く土を掻いて舞い上がった。

それで、自分にこれほどの跳躍力があったことをはじめて知った。

バンジェスやあの女も、こういう力を持っている、ということか。

次の瞬間には、シスカの姿は小さなテラスにあった。

薄いレースのカーテンがかかっているが、そこにはテーブルとソファーがあるのが見える。

僅かに窓が開いていて、そこからカーテンがひらひらと外にたなびいている。
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