甘い唇は何を囁くか
くっくと笑う宗眞の余裕の態度に、シスカは深くため息を零した。

遼子が、自分を忘れている―。

それに併せて宗眞のことも・・・。

それほど・・・


それほど俺たちのことを忘れてしまいたかったのか・・?

ヴァンパイアと出逢い、恋に堕ち、自らも化け物になると・・・

その為に、こいつとヤることまで、お前は選んでくれた・・・

すべては、俺と生きるために

そうだと、思っていた。

遼子の覚悟に、自分自身も報いねばならないと・・・。

ぐっとグラスを握る指に力を込めると、ピシッと鈍い音が奔り、グラスに皹が入った。

「なぁ。」

シスカは、宗眞の方をちらりと見遣った。

「とりあえずさ」

そう言いつつ、隣に座る女の太ももに触れている。

「腹、減らない?」

・・・浅ましい男だ。

遼子を我が物にしたいと言いながら、今、此処にいるどうでもいい女の身体を欲するというのか。

だが―

嗚呼・・・。

シスカは自らの隣に座る女の顔に視線を移した。

この目で見つめると、女の頬が一気に上気する。
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