甘い唇は何を囁くか
いつの間にか、日は暮れ

夜になり

いつの間にか、日は昇り

朝になっていた

ふたりはまだそれでも足りずに、求め合ってはお互いの血を啜り合った。

もう、十分だと

感じることなどなくて

止めることができないー

ふたりは繋がったまま、抱きしめ合い見つめ合った。

遼子の白い首筋に、鬱血した痕が浮かんでいる。

シスカは、その痕を優しく撫でて、呟いた。

「良かった…。」

自分の事を、思い出してくれてー

ヴァンパイア同士の吸血に何の支障もなさそうでー

遼子はくすっと笑い、シスカの首筋に指先を這わした。

「シスカも、ここ、蒼くなってるよ…?」

シスカは笑い答えた。

「あり得ないことだな。」

「うん…ふふ」

「…美味かったか?」

「…うん…」

遼子は難しい顔をして、こくりと頷いた。

薔薇の花を噛むような芳香

ワインでもなく、果実酒でもない深い濃密な味わい

そして満たされる空腹、飢餓感

言いようのない、充足感……
< 250 / 280 >

この作品をシェア

pagetop