甘い唇は何を囁くか
「本当に遼子が産んだんだ。」

「マジ・・・で?」

シスカは深く頷いた。

何で・・・だ?

ヴァンパイアに生殖能力はない。

あるのは、止めどない性欲と飢餓感・・・、人間を殺す毒だけだ。

「・・・毒・・・か。それか?」

宗眞は思い至って呟くように問いかけた。

ヴァンパイア同士の吸血行為なんて・・・ものは、そうあるわけがない。

俺たちは、そもそも一緒に行動したりつるんで存在するものではないし、お互いに不可侵だ。

触れ合うことも馴れ合うこともない。

自由に生きて、自由に存在する。

永遠を―。

だが、あれが原因としか考えられない。

「私の運命はシスカで、シスカの運命は私だった。」

遼子の声に我に返った。

娘を抱いて微笑んで続ける。

「この子がお腹に宿ってるって分かった時、確信したの。」

私はヴァンパイアという化け物に変わった。

けれど、私は私の運命が人間に与えるものではなくて、シスカにあるのだと強く強烈に実感していた。

シスカしかいない。

この人が運命。

この人だけが、私の命―。



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