甘い唇は何を囁くか
好きとか愛してるとか、そういうことから開放されようと来た自由の地で、まさかこんなにも悩まされるとは思ってもいなかったなぁと、遼子はその夜、ベッドの中で眠れないままに色々と考えていた。

確かに、もし良い出逢いがあれば―という気持ちがあったのは事実だけれど、こんな面倒な思いをするのは御免だった。

宗眞は―確かに良い奴で、そこらへんにそうはいないイケメンである。

けれど、あの彫刻のように整った顔立ちで、陰影さえも美しく、吐いた息さえも造形物のようなあの人には、何もかもが敵わない。

もう、自分の中では答えが出ていて、あの人のことを―、おそらく、いや、きっと…間違いなく、好きなんだろうと思う。

好き…になってしまった。

いつの間にか…。

恋愛というものは、そもそもそういうもので、理由や理屈なんてないんだから、今まで気がつかなかったのも当然なのかもしれない。

どうしようか―。

このまま日本に帰ってしまって良いのだろうか。

あの人を忘れられるのだろうか―。

いや、まだ何もはじまっていないのだから、夢でも見ていたのだと思って忘れてしまうべきなのだ。

きっと―。

「・・・はぁ。」

遼子は深くため息を吐いてベッドから起き上がった。

今夜は、眠れそうにもない。

夜風にでも、あたろう。。。
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