甘い唇は何を囁くか
月光が照らし出す女の姿は、どこか儚げで、たまらなく美しく…愛しい…。

今すぐに抱きしめて、…全てを奪いたくなる。

だからこそ、何も言えなかった。

シスかは、まだ信じられずにいたからだ。

バンジェスの言ったように、人間の女をー愛するなど、あるはずがない。

なのに、女が、さみし気に俺を見上げて、囁くように言った。

「私のことが、好きなの…?」

懐かしい記憶、何かどこかで、感じた事のあるような…だが、間違いなくそれは人間であった頃のことで、ヴァンパイアになってからは一度も感じた事のなかった感情が、魂を揺さぶった。

シスカは震えた。

気付いた。

唐突に、雷ぬ打たれたような衝撃が身体の中を貫いた。

俺はーーー好きなのだ…。

この、人間の…女を、愛したのだ、とー。

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