甘い唇は何を囁くか
ホテルのエレベーターに乗っている間も、
部屋の前にたどり着くまでの間も、ずっと唇を貪り合ったままだった。

遼子はもう蕩けたような目で、自分を見ている。

「遼子…りょう、こ…。」

その名が愛しくて、何度も繰り返してしまう。

「ん…や…あ…ふ…」

もう、言葉にさえならない。

愛する者の吐息。

遼子の服からホテルの部屋を開ける鍵を取り出して、シスカは扉を開けた。

こんなこと、今に始まったことではない。

これまで何度も何度も、喰らうためにキスで堕ちた女の部屋の鍵を開けてきた。

それなのに、どういうことか、今はまるで、自分が人間のように高揚している。

シスカは、尚更激しく口付けながら遼子をベッドに下ろした。

そして、ようやくーー口付けを終えチュッーと名残惜しげにイトを引かせて唇を離した。

はあーはあーーー

遼子を見下ろしてわシスカは唇を舐めた。

そして、微笑して言った。

「明日は、唇が腫れるだろうなー。」

人間であった頃は自分もそうだった。

ヴァンパイアになってからは、それほど唇を交わした事はなかったのだが、明日の自分の唇が腫れていると考えると、思わず笑ってしまう。

遼子も、つられて微笑を浮かべている。

「…シスカ、だ。」

シスカは上着を脱ぎながら遼子を見下ろして言った。

「…え…?」

上の服を脱ぎ捨てると、シスカの隆々とした肉体が露わになった。

信じられないほどの肉体美に、遼子は益々紅くなる。

「俺の名だ、シスカ。」

「シスカ…」

遼子はゆっくりとその名を繰り返した。

何て綺麗な名前…。

ギシっ

ベッドのスプリングが鳴り、シスカの唇が降りてくる。

遼子は思わず目を瞑った。
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