甘い唇は何を囁くか
『お前はもう分かっているはずだ』

鼓膜の奥に、響いた突然の声に―――硬直した。

バンジェス・・・

何が?

何を分かっているって―?

そうだ、確かに知った。

人間の女を愛するということ、人間を愛しいと思う気持ちが自分にもあったということ。

これが、運命だというのなら、確かにそうなのだろう、疑うことなどできない。

できるわけがない。

組み敷いた女の目蓋に、甘い口付けを落とし、その反応、ひとつひとつを確かめるように愛撫したくなる。

こんなことは、ヴァンパイアになってからはじめてなのだから。

『そう、ならばもう分かっているはず』

分かっている・・そうだとも。

だから、このままこの女を―、この人間を・・・甘く甘く調理する。

そして、この喉に流し込む血の味を想像して、こんなにも身体が熱くなる。

『そしてその後は、どうなる・・・?』

どうなる・・・

塗れそぼる泉に指を沈めて、遼子の漏らす甘い声とぴくんと震えるその反応を興奮を抑えて確かめながら、頭の奥の声に身を強張らせた。

「あ・・・あ・・・ん・・・っ!」

こんなに高ぶる感情を、抑制する辛さ、それに交えて言いようのない不安がこみ上げてきた。

すぐに分かった。

そう、バンジェスの言うとおりだ。

このまま、この女を・・・遼子を抱けば・・・数日と経たずに、ヴァンパイアの毒に冒されこの女は死ぬだろう・・・。

これまではそんなことは、どうでも良かった。

かまうことはない。

今の自分の欲望は、ヴァンパイアの魔力に磨きをかけ、目の前の女を気持ちよくさせる。

求めているのは、女の生気。

女の身体。

女の血。

それだけなのだ。だから、かまわない。

抱いた女が死のうがどうなろうが―。

「うっんっ・・・!」

だが、良いのか・・・?

こうして、ひとつひとつの反応にさえも、つのる愛しさを感じているのに、この女を殺してしまえるのか―?

「りょ、う・・・こ・・・。」

びくりとその身体がはねた。

はしる軽い甘やかな痙攣に、シスカはそっと指先を離した。



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