甘美な蜜のプワゾン
「はっきり言ってやったらどうだ」

「え?」

不意に右京の声がし、蘭と太郎は同時に顔を上げた。

その眼鏡の奥の目は、真っ直ぐ蘭を射るように見ている。

「迷惑だから、もっと横にずれろとな」

「な……別に迷惑だなんて――」

「あぁ、ごめん。やっぱ近すぎた?」

「いえ……すみません」

太郎は右京の言う事を気にする風でもなく、ふわりと笑うと、横へ身体をずらした。

(太郎先輩は優しい……。でも名村先輩は相変わらず直球でものを言うし……。しかもかなり嫌味入ってた。気まずい……)

太郎がイヤな気分になっているのではと、気が気でなく1人そわそわしていると、タイミングよく自分の降りる駅に電車が停車した。

「あ、あの私ここなので降ります。さ、さようなら」

逃げるように電車を降りてホッと息をついたとき。

「へぇ、結構大きな駅だ」

「きゃあ!」

直ぐ傍で聞こえた美声に驚き、声を上げる蘭。

「な、な、なんで……」

「おい、太郎! どこ行くんだ」

「どこって、俺は今から蘭ちゃん送ってく」

「はぁ!?」

右京との異口同音。

驚く右京はまだ電車内だったが、ドアが閉まるアナウンスが流れ咄嗟に右京は降りてきた。


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