甘美な蜜のプワゾン
初めて降り立った駅を珍しそうに見渡す太郎に、機嫌の悪そうな右京、そしてそれを遠巻きに見ているホーム内の客。

蘭は軽く目眩がした。

「あ、蘭ちゃん待って」

スタスタと改札口を出る蘭を余所に、乗り越しで改札口で捕まってる太郎と右京。

「ひどいなぁ蘭ちゃん」

階段を降りる蘭の肩を、太郎は軽く叩いてきた。
蘭は振り向き、困惑顔を太郎に見せる。

「あの、先輩……」

「なに?」

「その……送ってくれるって冗談だったりします?」

「なんで? 冗談でわざわざここまで来ないけど」

背の高い太郎は蘭の顔を覗き込むように、身を屈めて微笑んでくる。

確かに冗談だけでここまで来るのは相当の暇人くらいだろう。

だけど、なぜ太郎がわざわざ送ってくれるのかが分からず蘭の戸惑いは大きくなる。

「でも、ここから30分以上は歩きますよ? 時間も遅くなっちゃいますし……」

「30分!? それは尚更1人で帰らせるわけにはいかないだろ」

本当は20分弱だが、少しオーバーに言った時間に太郎は驚きはしたが、嫌な顔を見せない事に蘭は何だか心がぽかぽかと温かくなった気がした。



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