甘美な蜜のプワゾン
「お前、そういう事――」

「右京」

何やら聞いてはまずかったような雰囲気が流れ、蘭は焦った。

「あの、すみません」

ベンチに1人で座る太郎に頭を下げようとした蘭だったが、太郎の制止が掛かった。

「蘭ちゃんが謝る必要はないよ。ただ、俺自身も実は分かんなくてさ……」

「え……?」

太郎は水を一気に喉に流し込んでいく。
上下する喉仏さえも、こんな雰囲気の中でもセクシーだった。

「あの人は日本人なんだけど、父親がね……分からないんだ。何処の誰なのか……」

右京はムスっとした顔で、フェンスの向こう側を見ている。

“あの人”……それは母親を指している言葉なのだろう。

それだけで親子関係が上手くいっていない事が伝わってくる。
蘭は言葉が出て来ず、ただ黙るしかなかった。

「まぁ、この髪も目も一応天然だし、父親が純日本人とは言えないのかもだけど」

外国人と明言しないのも、それさえも……何もかもが父親に関しては分からないと言うことが良く分かった。

「太郎がまさかそこまで喋るなんてな……」

右京は不満げな様子で大きな溜め息を吐く。

「そうだな……。右京以外この事を知ってる奴いねぇもんな」

それを太郎は苦笑で返した。





< 48 / 68 >

この作品をシェア

pagetop