甘美な蜜のプワゾン
***
「タロちゃん、おはよう。起きてぇ」
「んん……」
心地いい解放感の中、それを邪魔する奇妙な声に太郎は不機嫌そうに身動(みじろ)ぐ。
「早く起きなきゃ、キスしちゃうよ?」
「ん……んん」
何とも言えない気配が太郎の身体に重くのし掛かり、苦悶の表情を浮かべる。
「兄さん!! 毎度毎度何してるんですか!」
勢いよく扉が開く音に太郎は飛び起きた。
「うおっ! ビックリした」
ミルクティ色の髪があちこちと跳ねる髪を掻き上げながら驚く太郎を余所に、親友である右京は鬼の形相。
「だって、タロちゃんは普通に起こしても起きないだろ? まだおネエ言葉だとタロちゃん反応すっからね」
「そうじゃなくて、今……本当にしようとしてたでしょうが!」
「いやぁ……タロちゃんならマジでいけそう」
「兄さん!」
「右京……樹(いつき)さん……ごめん、ちょっと頭に響く……」
ここは右京の家で、豪邸とまではいかないが、有名な建築家がデザインしただけあってお洒落でセンスがいい。
そのゲストルームの一室でのこの騒ぎに、太郎は額を押さえた。
「悪い太郎、大丈夫か? いつも樹兄さんがすまない」
「いやぁ……ごめんね? タロちゃんの綺麗な寝顔を見るとついね」
「いつも思うけど朝から2人元気だよな……」
太郎は苦笑してからベッドの上で伸びをする。
それを見ながら樹は「タロちゃんはいつも朝から色気が半端ねぇな」と笑った。