叢雲 -ムラクモ-
「あの二人、性格は全く違うってこと?」

「……は? なんの話だ」

「だから、さっきの花火! 黄色と紫色だったでしょ? でも寄り添っててハートだから、ラブラブなんだよね」

ラブラブて。死語じゃねえのか。

「う。そ、そんなことはいいの! ……『恋人たちの時間』の二人は、あたしたちに似てるなって思っただけ」

「似てる?」

「性格も色で表すと和さんは紫色だしさ」

「北川は黄色ってとこか」

「うん。その対照的な色がくっついたのは、すごいことだと思うんだ」

北川にしちゃあえらく難しい話だな。

「ううん……あたしも自分がなに言ってるかよく分かんないけど……」

また花火があがった。

花火の光に照らされた北川の横顔はひどくアンニュイで、正直そんな顔を見るのは初めてだ。

「……北川」

「ん?」

「キス、していいか」

「はえ!?」

北川は、重ねていた手も離してあわあわと視線をさ迷わせる。

俺がこんなことを言ったのにはもちろんわけがある。

北川が慌てているのを見て楽しむのももちろんだが、とりあえずアンニュイな表情を取っ払いたかった。

案の定そんな表情はどこへやら、赤くなった頬を手でおさえその熱さに驚いている北川は、しばらくあたふたした後に俺の左手をとった。

慌ててバランスをとるため重心を少し前にする俺。

「……い、いいよ」

……いや、本気で言ったんじゃなかったが、まあいいか。
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