叢雲 -ムラクモ-
普通の部類に上げてやってもいいチャイムがもうひとつある。

言うまでもない。六時間目終了を告げるチャイムだ。

俺は広げていたチョークをチョーク箱にしまい、礼を受けてから教室を出た。

うちの学校は学年ごとに校舎が違うから面倒くさい。

職員室に寄って、一年校舎まで早歩き。教室に着いたら掃除が始まっていた。

サボってる奴がいないかどうか、確認。

「……あれ?」

北川、教室の当番じゃなかったっけ?

北川の友達である有坂ゆうきに聞いたが、知らないと言う。

「ゆうきちゃん、机運んでー」

ほうきを持つクラスメートに声をかけられて、生真面目にも俺に頭を下げてから有坂は掃除に戻る。

……どこ行ったんだ、北川の奴。

大声で生徒達に聞くが、誰も知らないと言う。んな馬鹿な。

とりあえず掃除が終わったら帰ってくるだろうと、俺は考えた。










考えは甘かったようだ。

結局、掃除が終わってみんなが席についても、北川の席だけがポツンと空いている。

「本当に誰も知らないのか?」

「知りませーん」

……なんでだよ。誰か知っとけよ。

「先生ー」

「なんだ」

「北川さん帰ってこないけど、あたしたちは終礼して帰りたいでーす」

気持ちは分かる。一人の生徒のせいでみんなが遅れてるんだからな。

「部活にも遅れちゃいますし、終礼して終わりましょうよー」

「……ああ、仕方ない。始めてくれ」

学級代表にそう言えば、終礼を始めた。










北川の荷物がある以上、教室を閉めるわけにはいかない。

……あいつ確か、バスケ部だったよな。

俺は体育館に足を向けた。
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