甘い恋飯は残業後に


「……難波さんは?」

何となく一瞬、難波さんの名前を出すのをためらってしまった。

兄貴は些細なことに気づく人ではないから、こういう時助かる。

「バーサンは今、シャワー中。シャワー室あそこだから、覗いて来れば?」

ニヒヒ、と兄貴はわたしをからかうように笑いながら、斜め後ろに視線を向ける。そこには確かに『シャワー室』と書かれた、カーテンで区切られた場所があった。


「な、何言ってんの。覗く訳ないでしょ!」

「ばーか、冗談だろ。ムキになんなって」

「ムキになんか、なってない」

兄貴とそんなくだらないやりとりをしているうちに、シャワー室のカーテンが勢いよく開いた。中から出てきたのはもちろん、難波さん。


「桑原も来てたのか」

難波さんはわたしを見るなりそう言って、濡れた髪をガシガシと雑にタオルで拭きながらこちらに近づいてくる。

「この後の祝勝会、来るだろ?」


髪からしたたる雫。上気した顔。

見てはいけない上司の姿を見てしまっているようで、落ち着かない。


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