甘い恋飯は残業後に
「あのドリンクだって……まさか、難波さんが兄の話していた“バーサン”だったなんて思わなかったから」
“バーサンの合格の味”をそのバーサン本人にドヤ顔で出していたかと思うと、恥ずかしくて穴にでも潜りたい気持ちになる。
「“バーサン”ってあだ名は千里がつけたんだよ。難波の“バ”を取って“バーサン”らしい。俺は千里と同学年だけど一浪しているから、呼び捨てなのもと、きっとあいつなりに気を遣ってくれたんだろうな」
兄貴が人に気を遣えるとは思えない。多分、響きが面白いから、とか単純な理由に違いない。
しかし、難波さんが一浪していたなんて知らなかった。
今まで全くの苦労知らずで、自分の思うがままに生きてきた人だと思っていた。
「次の予定もあるから、あと十五分でここ出ろってー!」
どこかから、そんな声が聞こえてきた。みんなそれに反応して、すぐさまきびきびと動き出している。
「俺らもすぐ行くから、万椰はこいつらと球技場の正面で待ってて」
兄貴に後ろから声を掛けられ、わたしは難波さんに「じゃ、また後ほど」と挨拶してから、兄貴がはべらせていた女性達と更衣室を後にした。