甘い恋飯は残業後に
「勘弁して下さい。今日は午後から店舗営業部の全体会議なんで、それまでに資料も作らなくちゃいけないですし」
「そんなの、昨日のうちに出来なかったのか」
――昨日も店舗巡回に引っ張り出したのは、一体誰なのよ。
そう口を衝いて出そうになって、ぐっと堪える。
「難波さんも確か、今日は午前中にモリヤ側との重役会議がある日でしたよね?」
「……あぁ、そうだった。忘れてた」
はあ、と軽くため息を吐きながら、難波さんは渋い顔をする。
まったく、そういう重要なことは忘れないでいただきたい。
「仕方ないな。でも明日は必ず巡回に行くから、そのつもりで仕事を片付けておけよ」
「あの……月末も近くなってきたので、明日はオフィスでの仕事を優先したいんですけど……」
やんわりと言ったつもりだったけど、気に食わなかったのか、彼はわたしに鋭い視線を向ける。
「だめだ」
「そんな……」
「そのかわり、来週は俺だけで巡回に行って、桑原は勘弁してやる。それなら文句ないだろ」
横暴な彼はそう言い捨て、廊下へと消えていってしまった。
「……なんなのよ、あの人」
わたしは誰にも聞こえない声で小さく呟き、自分の席に着いた。