甘い恋飯は残業後に
「こうでもしなければ、ひとりで泣くんだろ?」
「……別に、ひとりでも泣きませんよ」
「本当に意地っ張りだな」
もう意地っ張りでも何でもいい。放っておいてほしい。
「ひとりでじっくり考えることも、もちろん大事だ。でもひとりでばかり泣いていると、負った傷はどんどん深く抉れていくもんだ」
刺さっていたナイフを引き抜かれたような痛みが走った。そこから血が溢れていくみたいに、わたしの目から雫がぽたぽたと落ちた。
塗り固めた壁が、ボロボロと崩れていく。せっかく、ここまで我慢したのに。
「……何にも、知らないくせに……っ」
傷を負ったのは、わたしじゃない。
「わたしは、誰かに慰められる資格なんかないんですよ……。わたしが傷ついたんじゃなくて、傷つけたんですから……」
「今日に限って言えば、桑原が傷つけられたんだろ。あんな人前で……常識に欠けるようなこと」
言葉を一度飲み込み、わたしを気遣って当たり障りのないものを選び直したのだとわかった。
やっぱり元彼の言ったことは、難波さんにも全て聞こえていたんだ。あんな大きな声で言ったのだから、当たり前だ。
――なのに。
ショックを受けているのは、何故なのだろう。