甘い恋飯は残業後に
*
それから、わたし達はひたすら飲んだ。
わたし達、というより、わたしに難波さんが付き合ってくれた、と言った方が正しいかもしれない。彼はわたしの横で、わたしの話を聞きながら、顔色ひとつ変えずに淡々と飲んでいた。
傍から見た自分、帰りの心配、そういうのを一切考えずに飲んだのは、いつぶりだろう。
物凄く癪だけど――わたしは多分、難波さんに気を許したんだと思う。
あんな話を茶化すことなく真面目に聞いてくれて、その上『この歳で処女でもおかしいことはない』と言ってもらえて、救われたからなのか。うっかり、緩めてしまった。
帰り、難波さんと一緒にタクシーに乗ったところまでは覚えてる。その後、どうやって部屋までたどり着いたのか……頑張って思い返してみても、記憶がない。
――怖い。
今まで、どれだけ飲んでも記憶をなくしたりしなかったから、記憶がないということが、こんなにも怖いことだとは思わなかった。
でも今、たしかにわたしはベッドの上にいる。この感触は間違いなくベッドだ。床でもソファーでもない。
恐る恐る目を開けると、見知らぬ白い天井が目に入った。
「え……」
待って待って。
わたしはもう一度目を瞑る。次に目を開けたらきっと、自分の家の天井が見える筈だ。