甘い恋飯は残業後に
「言っとくけど、何もしてないからな」
「別に、疑ってはいませんけど……」
顔が熱くなった。
難波さんがそんなことをする筈がないことぐらいわかっている。わかってはいるけど、万が一、っていうこともあるから、一応確認しただけで――。
「何か、予定あるか?」
「……え? あ、会社……!」
「安心しろ、今日は土曜だ。特に予定がないなら、まずはコーヒーでも飲んで落ち着いたらどうだ」
さっきはただ状況を把握するのに必死だったから、今が何時かまでは見ていなかった。慌てて確認すると、デジタル時計が八時五分と表示している。
土曜に予定がないのはいつものこと。でも素直に「予定がない」と言ってしまうのは、いろんなことを暴露した後でも、何となく面白くない。
「予定は、ない訳じゃないですけど……まだ余裕がありますから」
「じゃ、今コーヒー淹れるから、こっちの部屋に来てソファーに座ってろ。……ああ、その前に顔洗うか? たしか、メイクも落とせるっていう洗顔料があった筈だけど……」
――それは誰のもの、なんだろう。
ゆうべ散々泣いた自分の顔が今どんな悲惨なことになっているのかを考える前に、頭にはそのことが浮かんだ。
誰のものでも、わたしには関係のないことなのに。