甘い恋飯は残業後に



「万椰」

突然、頭上に自分の名前が聞こえて見上げると、そこには仲の良い同期の女子社員が立っていた。例の『立派に男を騙せる』と無責任な太鼓判を押してくれた彼女だ。


「あんた、リテールの山西さんとなんかあった?」

思いがけない問いかけに、ドキリとする。
また、しかも全く関係なさそうなところから、その名前を聞くことになるとは。

「あったと言えば、あったけど……」

「他部署の人から聞いた話だと、山西さん、どうやら万椰の悪口をあちこちに吹聴しているらしいよ」



――またか。


そう思ってしまうところが、悲しい。

同じようなことは過去にもあったから、驚きはしないけど……でも。


「向こうはフラれた腹いせで出まかせを言ってたとしても、それを鵜呑みにしたり尾ひれをつけたりする人も出てくるかもしれないから、とにかく誰の挑発にも乗らず、悔しいだろうけど静観してなよ」

その言葉には苦笑するしかなかった。

彼女が「静観しろ」と言ったのは、過去に同じようなことがあった時、わたしがいちいち弁解して回って騒ぎが余計に大きくなったのを知っているからだ。


「……うん、わかった。ありがとう」

彼女は微笑むと「今度飲み行こう」とわたしの肩をポンと叩いて、社食を出て行った。


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