甘い恋飯は残業後に


誰のものかわからない洗顔料を使うのは一瞬躊躇したけれど、この顔を晒し続けることと天秤にかけたら、ためらいはすぐに消えた。

メイクを落とし、小瓶に入った化粧水をつけファンデーションを塗る。何とか人に見せられる顔になってから、わたしはそろそろとリビングに戻った。


「……これ、ありがとうございました」

どうにも居た堪れず、俯き気味にタオルと洗顔料を渡す。

「ああ」

彼は特に何か言うでもなく、態度もいたって普通だ。

気を遣われているのかも。そう考えると、ますます居た堪れない。


バッグを置いていた部屋に入って――何気なく、自分が寝ていたベッドに視線が向いた。

さっきは混乱していて余裕がなかったから気がつかなかったけど、このベッド、シングルサイズじゃない。

やっぱり誰か、ここに来ている人がいるんだろうか。


「だから、何だっていうの……」

小声で、自分に言い聞かせるように敢えて口に出した。

洗顔料のことといい、ベッドのことといい、難波さんが誰とどうしようがわたしには関係のないことだ。

そう思う度、心の中がモヤモヤする。


頭を切り替えなきゃ。

ポーチをしまおうとバッグを開けると、携帯が目に入る。チェックすると誰かからメールが来ていた。


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